田植えが終わった後、次の仕事は「畦草刈り」です。畦の草刈りは、一見「田んぼに草が生えているわけじゃないからほっておいても良さそうなのに、なんでわざわざ草刈りをするのだろう?」と思う方も多いのではないでしょうか。
畦草刈りは、単に見栄えをよくするためにしているのではなく、お米を育てる上で重要なポイントがあるのです。今回は、畦草刈りをする理由・草刈りをするときのポイントや道具・処理方法について紹介します。
畦草刈りはするべき?
まずは「畦草刈りはするべきなのか」の疑問についてチェックしていきましょう。先ほど、畦草刈りは見栄えを良くするためではなく、米作りに対して意味があるものだと説明しました。では、どのような意味があるのでしょうか。
雑草や害虫の発生を抑える
畦草刈りをする理由は「雑草」そして「害虫」の発生を抑えることです。いくら畦とはいえ、雑草が生えすぎて圃場にまで入ってしまうと、もちろん稲の成長に影響が出ますよね。背丈が大きくなりすぎると、影を作ってしまい、稲に十分な日光が当たらなくなることも考えられます。
ですが、上記のような影響が出るまでほおっておくことはまれでしょう。そのため「適度な高さだったらそのままほおっておいてもいのでは?」と思う方もいらっしゃりますよね。ですが、畦草刈りをするもう一つのポイントは「害虫」なのです。
一番避けたいのは「カメムシ」の発生
畦草刈りをする重要なポイントは「カメムシ」の発生を抑えるためです。実は、カメムシはイネ科の雑草や稲の穂が大好き。そのため、雑草にイネ科のものがあると、カメムシが寄ってきてしまいます。
カメムシが稲の近くで大量発生すると、もちろん圃場にまで進出することも…。穂をつけたばかりの稲にカメムシがついてしまうと、黒い斑点がついたお米になってしまいます。黒くなってしまったお米が混ざっていると、高いランクでは販売できず、価値が下がってしまいます。そのため、収益にも大きな影響が出てしまうんです。
そのため、カメムシを寄せつけないように畦草刈りをすることが重要になるんですよ。
全て刈り取らなくてもOK
雑草や害虫の発生を防ぐために、畔にある雑草はとにかく全部刈り取ってしまえばいいのか、といえばそうでもありません。圃場の数が多い場合は特に、常に雑草がない状態にしておくのは作業量的に無理があるでしょう。雑草の成長は早いので、毎日雑草と戦うことになります。
そのため、稲に影響がない程度に適度に刈り取る程度でOKです。
畦草刈りをするときには計画を立てよう
畦草刈りは「適度」でOKとはいっても、どのくらいが適度なのか分からないというあなた。次に、畦草刈りをするときに重要なポイントを説明します。
畦草刈りをするときには、数年単位で考えて、カメムシが寄りつかないような環境を作る計画を立てることが重要ですよ。
カメムシが寄るのは「イネ科」の雑草
畦草刈りで重要なのは、「イネ科の雑草」を無くすことです。そのため、イネ科の雑草が生えていない場合は、それほど畦草刈りに躍起になる必要はありません。
あなたの圃場の周りの雑草をチェックしてみましょう。イネ科の雑草が多いようであれば、カメムシが発生する可能性も大。畦草刈りをして、カメムシ対策をすることが重要です。
イネ科の雑草で代表的なものはメヒシバ・エノコログサ・イヌビエなど。田んぼの周辺に生えやすい雑草なので、あなたの圃場の近くにも生えていないかチェックしましょう。
広葉雑草を増やすのがポイント
畦草刈りをするときには「とにかく雑草を刈り取ればいいんでしょ?」と根本から雑草をなぎ倒すのはおすすめしません。というのも、雑草にはイネ科のものまれば、広葉雑草など、科が違う雑草が混ざっています。
今回対策したい「イネ科」の雑草は、他の科の雑草よりも草が生える力が強く、全て刈り取ってしまうと次に生えてくるのはイネ科の雑草だらけになってしまいます。
イネ科の雑草をなくしたいのに、イネ科のものを育ててしまう状態になってしまうと元も子もありません。そのため、イネ科の雑草の成長を抑え、他の科の雑草が生えやすい環境を整えることが重要です。
10~15cmほど高めに刈ることがおすすめ
イネ科の雑草の成長を抑えるためには、根本から全てを刈り取るのではなく、10cm〜15cmの高さを残して刈り取ることが重要です。
10cm程度残して切り取ると、イネ科の幼芽をつむことができ、成長を鈍化させることが可能です。「イネ科の植物が残っているから心配…」という方。実は、普通に稲刈りをしたときよりも、10cmほど残して高刈りをしたほうが、カメムシの発生が4分の1ほどになったというデータもあるんですよ。
(参考資料:http://www.agri-exp.pref.shizuoka.jp/suidenpro/pdf/topic04-01.pdf)
また、根本から刈り取っても、15cm程度残して刈り取っても、1ヶ月後のイネ科雑草の草丈は変わりません。
雑草を刈りすぎて、逆にイネ科の雑草ばかりになってしまわないように、高刈りをすることがおすすめです。
畦草刈りをするときにおすすめの道具
では、畦草刈りをするときには、何を使って行うのがいいのでしょうか。
雑草取りをする範囲がそれほど広くない場合は、鎌を使って行うことも可能です。ですが、広い範囲だとなかなか作業が追いつかないですよね。
作業範囲が広い場合は、草刈り機を使って行いましょう。平坦なところだけを草刈りするのか、もしくは斜めになっているところを草刈りする可能性もあるのかで、選ぶ草刈り機は変わってきます。
また、エンジン式や電気式、肩にかけるタイプや背負うタイプなど種類も様々です。
既に草刈り機を持っている場合は、持っているものを利用するとOK。まだ持っていない人は、どういう場所に使うのか、どのタイプだと使いやすいのかを考えて、購入することがおすすめです。タイプによって、身体への負担のかかり方が変わるので、実際に試してみて身体にフィットするものを選ぶのがおすすめですよ。
畦草刈りをしたときの草の処理方法
畦草刈りをした後の雑草は、そのまま置いておいてもいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。もちろん、そのまま置いておくと、日陰ができるため雑草の成長を遅らせることもできますし、何より手間がかからないのでラクチンです。
ですが、雑草の分解をするためミミズが集まり、ミミズを餌とするモグラが集まり、畦を破壊してしまう可能性もあるんです。そのため、できれば一箇所にまとめておくことがおすすめです。近くに家畜を飼っているところがある場合、新鮮な草を届けてあげるのもいいでしょう。
畦草刈りを徹底して美しいお米
“畦草刈りは、単に生えている雑草を刈り取ったらいいといった単純なものではありません。植物の種類をよく見て、何科のものが多く生えているのか、確認することから始まります。
稲を作るときには、イネ科の雑草との関係は切り離せません。米の価値を下げてしまう「カメムシ」の発生をコントロールするためには、畦草刈りから始まっているのです。
次のお米は、カメムシの影響がない真っ白なお米ができるように、畦草刈りから管理していきましょう。
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